港湾法の建築制限とは?港湾区域・臨港地区の許可と分区規制を解説
重説シリーズ㉖は港湾法を整理。港湾区域内の占用許可、臨港地区の分区規制と分区条例、工場新設等の事前届出、建築確認との関係まで、実務で押さえたい制限と手続きの要点を解説します。
📑 目次
スタッフ社長、お客さんから『港のそばの土地なんだけど、ここって普通に倉庫とか建てられるの?』って聞かれたんですけど、港の近くって何か特別なルールがあるんですか?
スタッフ私も気になってました。重説で『港湾法』って文字を見たことはあるんですが、実務でどこまで効いてくるのか正直つかめてなくて。
社長ええ質問やな。港湾法は水際の土地・水域を扱うときに効いてくる法律や。今日はその目的から、建築の制限、許可・届出の手続きまで、順番に整理していこか。
そもそも港湾法とは?目的と適用範囲
港湾法は昭和25年(1950年)5月31日に公布された法律第218号です。交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発・保全することを目的としています。
実務でまず押さえたいのは『港湾区域』と『臨港地区』という2つの区域概念です。港湾区域とは、法第4条第4項等の規定による同意又は届出があった水域をいい、経済的に一体の港湾として管理運営するために必要な最小限度の区域として認可された区域です。
一方の臨港地区とは、都市計画法第2章の規定により臨港地区として定められた地区、又は港湾法第38条の規定により港湾管理者が定めた地区をいいます。水域中心の港湾区域と、陸域の土地利用を規律する臨港地区、と整理すると分かりやすいでしょう。
スタッフ水域って、海の上の話ですよね?陸の不動産取引と関係あるんですか?
社長ええとこ突くな。港湾区域は基本的に水域の話や。だから水域を占用したり、土砂を採取したり、係留施設や運河なんかを建設・改良する行為には、港湾管理者の許可が要る。これが法第37条第1項や。
スタッフなるほど、桟橋を作るとか、水域を使うようなケースですね。じゃあ陸側の土地利用は臨港地区の方で見ると。
社長そういうことや。臨港地区には『分区』という仕組みがあってな。ここが陸の建築制限の本丸や。
臨港地区の『分区』と建築制限
臨港地区では、無秩序な土地利用を回避し計画的な土地利用と港湾活動の活性化を図るため、一定の区域ごとに構築物の用途を規制する『分区』が設けられます。分区は港湾管理者が定めます。
港湾管理者は、臨港地区内において、商港区・特殊物資港区・工業港区・鉄道連絡港区・漁港区・バンカー港区・保安港区・マリーナ港区・クルーズ港区・修景厚生港区の各分区を指定することができます(法第39条第1項)。なお、クルーズ港区は平成29年法律第55号(2017年6月9日公布・同年7月8日施行)により追加されたものです。
分区の区域内では、各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であって地方公共団体の条例で定めるものを建設してはならず、また改築又は用途変更によりその条例で定める構築物としてはなりません(法第40条第1項)。重要なのは、分区内では構築物の用途について建築基準法第48条(用途地域)及び第49条(特別用途地区)の規定が適用されず、各自治体の分区条例が適用される点です。
港湾法第39条第1項に基づく分区の種類
| 分区 | 備考 |
|---|---|
| 商港区 | — |
| 特殊物資港区 | — |
| 工業港区 | — |
| 鉄道連絡港区 | — |
| 漁港区 | — |
| バンカー港区 | — |
| 保安港区 | — |
| マリーナ港区 | — |
| クルーズ港区 | 平成29年法律第55号で追加 |
| 修景厚生港区 | — |
スタッフ分区内は建築基準法の用途地域じゃなくて分区条例で見る、ということは、建築確認の流れも普通と違ってきますか?
社長そこは要注意やな。分区内で建築確認申請を行うときは、各自治体が定める手続で、構築物の用途が分区条例に適合することを港湾管理者が確認してから、建築確認申請が受理される運用になってる。
スタッフえっ、確認申請の前に港湾管理者のチェックが入るんですか。一般のお客さんは絶対ここで詰まりますね…。
社長せやから水際の物件は早めに港湾管理者に当たっておくのが鉄則や。後から用途がアウトとわかると計画が崩れるからな。
許可と届出 ― 手続きの使い分け
港湾区域内又は港湾隣接地域内において、水域・公共空地の占用、土砂の採取、水域施設・外郭施設・係留施設・運河・用水渠・排水渠の建設又は改良などの行為をしようとする者は、港湾管理者の許可を受けなければなりません(法第37条第1項)。この水域占用許可については、行政手続法の施行を受けて審査基準及び標準処理期間を定めることとされています。
港湾管理者は、水域の占用が港湾の利用若しくは保全に著しく支障を与え、港湾計画の遂行を著しく阻害し、その他港湾の開発発展に著しく支障を与えるものであるときは、許可をしてはならないとされています。
他方、臨港地区内において、水域施設・運河・用水渠・排水渠の建設又は改良、一定規模以上の工場又は事業場の新設・増設などの一定の行為をしようとする者は、工事開始の日の60日前までに港湾管理者に届け出なければなりません(法第38条の2)。届出対象となる工場又は事業場の規模要件は、床面積の合計が2,500平方メートル以上又は敷地面積が5,000平方メートル以上です。なお、法第37条第1項の許可を受けた者が当該許可に係る行為をしようとするときは、第38条の2の届出は不要です。
臨港地区内行為の届出(法第38条の2)の流れ
スタッフもし分区条例に合わない建物を建てちゃったら、どうなるんですか?
社長港湾管理者は、分区内にあって条例で定める構築物となった建築物等について、所有者や占有者に撤去・移転・改築又は用途変更を命ずることができる。その命令にあたっては聴聞を行わなあかんことになってる(法第41条等)。
スタッフ是正命令まで来るんですね…。罰則もあるんですか?
社長港湾法には罰則の章があって、分区条例違反については条例で罰金規定を設けられるなど、違反に対する罰則・是正命令等の法的効果がある。ただ金額や年数はここで断定せん。罰則の対象となり得る、として詳細は当該法令・条例を確認するのが正しい構えや。
まとめ ― 実務者が押さえるべきポイント
まとめると、港湾法は昭和25年公布の法律で、水域中心の『港湾区域』と陸域の土地利用を規律する『臨港地区』という2つの区域概念を軸に理解するのが近道です。
港湾区域・港湾隣接地域での水域占用や施設建設などは法第37条第1項の許可、臨港地区内の一定の行為は工事開始の日の60日前までの届出(法第38条の2)という、許可と届出の使い分けが要点になります。
陸側の建築制限では、分区内は建築基準法第48条・第49条が適用されず分区条例が適用される点、そして建築確認申請の前に港湾管理者による用途適合確認が入る運用が実務上の落とし穴です。条例違反には撤去・用途変更等の是正命令(聴聞を経て行われる)や罰則の対象となり得るため、水際の物件は計画の早い段階で港湾管理者に確認することが、トラブルを避ける最大のポイントといえます。
出典: 官公庁(japaneselawtranslation.go.jp) / e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 大阪市 / 香川県 / 福岡県 / 宮城県 / 岡山県 / 自治体(kouwan.metro.tokyo.lg.jp) / 自治体(city.fukuoka.lg.jp)