温泉法を実務目線で解説|掘削許可と湧出地の建築制限・重説の留意点
温泉をゆう出させる目的の土地掘削には都道府県知事の許可が必要で、有効期間は2年。許可要件や増掘・動力装置の規制、他目的掘削による影響防止命令、宅建業法上の重要事項説明・告知義務の留意点を一次ソースに基づき整理します。
📑 目次
スタッフ社長、温泉付きの物件を扱うことになったんですけど、温泉ってそもそも勝手に掘っていいものなんですか?
スタッフ現場でもよく聞かれます。『うちの土地で温泉出ないかな』って軽く言われるんですけど、手続き的にはどうなるんですか?
社長ええ質問やな。結論から言うと、温泉をゆう出させる目的で土地を掘削するには都道府県知事の許可が要るんや。温泉法という法律で決まっとる。
スタッフえっ、許可制なんですか!
温泉法とは何か
温泉法は昭和23年法律第125号として制定された法律です。温泉を保護し、温泉の採取等に伴って発生する可燃性天然ガスによる災害を防止し、温泉の利用の適正を図って公共の福祉の増進に寄与することを目的としています。所管は環境省です。
単に「温泉を守る」だけでなく、可燃性天然ガスによる災害防止という安全面の目的も併せ持っている点が特徴です。実務で物件に温泉が絡む場合、この法律の許可関係を押さえておく必要があります。
スタッフその掘削許可って、誰でも申請できるんですか?
社長温泉法第3条で、温泉をゆう出させる目的で土地を掘削しようとする者は、環境省令で定めるところにより都道府県知事に申請して許可を受けなあかん。ただし第3条第2項で、掘削に必要な土地を掘削のために使用する権利を有する者でないと許可は受けられん。
スタッフ土地を使う権利がないとダメ、ってことですね。じゃあ許可はどういう時に出ないんですか?
社長第4条がポイントや。知事は原則として許可せなあかんのやけど、掘削が周囲の温泉のゆう出量・温度・成分に影響を及ぼすと認めるとき、可燃性天然ガスによる災害防止の技術基準に適合せんと認めるとき、公益を害するおそれがあると認めるとき等は別、という構造になっとる。
温泉掘削許可(温泉法第3条・第4条)の主な要件
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 許可権者 | 都道府県知事(第3条) |
| 申請者の資格 | 掘削に必要な土地を掘削のために使用する権利を有する者(第3条第2項) |
| 主な不許可事由 | 周囲の温泉のゆう出量・温度・成分に影響を及ぼすと認めるとき/災害防止の技術基準に不適合と認めるとき/公益を害するおそれがあると認めるとき 等(第4条) |
| 欠格事由 | この法律の規定により罰金以上の刑に処せられ執行終了等から2年を経過しない者、許可取消しの日から2年を経過しない者、その役員がこれらに該当する法人(第4条) |
| 許可条件 | 温泉の保護・可燃性天然ガスによる災害の防止その他公益上必要な条件を付し、変更できる(第4条第3項) |
スタッフ許可をもらったら、ずっと有効なんですか?
社長いや、第5条で有効期間は許可の日から起算して2年や。災害その他やむを得ない理由で期間内に工事が終わらん見込みのときは、一回に限り2年を限度に更新できる。
スタッフ工事が終わったあとはどうなります?
社長第8条で、工事を完了したり廃止したりしたら、遅滞なく環境省令の定めにより知事に届け出なあかん。それと、既にある温泉でも、第11条でゆう出路を増掘したり、ゆう出量を増やすために動力を装置したりするときも知事の許可が要るんや。
スタッフなるほど、新規だけじゃなくて増掘や動力装置も許可対象なんですね。
温泉掘削許可の手続きの流れ
スタッフところで、温泉を出すつもりはなくても、たまたま温泉に影響しちゃう掘削ってありますよね?水井戸とか。
社長ええとこ突くな。温泉をゆう出させる目的がない掘削、たとえば地下水採取目的の水井戸掘削や地質・地熱構造調査の掘削は、第3条の許可は不要や。ただし第14条で、温泉をゆう出させる目的以外の掘削で周囲の温泉のゆう出量・温度・成分に著しい影響が及ぶ場合、公益上必要があれば、知事が影響防止の必要な措置を命ずることができる。
スタッフ許可は要らなくても、措置命令の対象にはなり得るってことですね。これは現場で誤解されやすいポイントだ。
社長そうや。それと第13条で、知事は掘削許可等の処分で隣接都府県の温泉に影響を及ぼすおそれがあるときは、あらかじめ環境大臣に協議せなあかん。広域に影響する世界やということやな。
スタッフ我々の本業に戻すと、重要事項説明ではどう扱えばいいんでしょう?
社長宅建業法第35条第1項は、契約成立までに宅地建物取引士をして書面を交付して重要事項を説明させる義務を定めとる。第1項第2号で、都市計画法・建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものの概要を説明することを求めとる。
スタッフ温泉法もその政令で定める法令に入ってるんですか?
社長そこは断定を避けたいところや。温泉法が施行令の列挙に明示的に含まれるかは、ここでは確たることは言えん。ただし第47条第1項で、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事実を故意に告げなかったり不実を告げたりするのは禁止されとる。温泉の掘削許可の有無や条件、増掘・動力装置の許可、隣接への影響といった事情が判断に重要なら、説明の検討対象になり得る、という整理が安全やな。
スタッフ35条の列挙に入るかどうかとは別に、47条の不告知禁止の観点でも見るべきなんですね。
社長そういうこと。あと説明のときは第35条第4項で宅地建物取引士証を提示するのも忘れんようにな。
温泉地域の指定について
温泉法に基づき、環境大臣は温泉の公共的利用増進のための地域として国民保養温泉地を指定することができます。国民保養温泉地は、温泉利用の効果が十分期待され、健全な保養地として活用される温泉地を環境大臣が指定するものです。
なお、温泉法には立入検査、報告徴収、許可の際の条件付与のほか罰則等の規定があり、罰則は第7章(第38条以下)に置かれています。違反は罰則の対象となり得るため、詳細は当該法令を必ず確認してください。
まとめ:実務者が押さえる温泉法のポイント
まとめると、温泉法は昭和23年法律第125号として制定された環境省所管の法律で、温泉の保護と可燃性天然ガスによる災害防止、利用の適正を図ることを目的としています。中心となるのは許可制で、温泉をゆう出させる目的で土地を掘削するには都道府県知事の許可が必要です(第3条)。申請者は掘削に必要な土地を使用する権利を有する者に限られ(第3条第2項)、第4条の不許可事由に該当しなければ原則許可されますが、公益上必要な条件が付される場合があります。
許可の有効期間は許可の日から2年で、やむを得ない理由があれば一回に限り2年を限度に更新できます(第5条)。工事完了・廃止時は遅滞なく知事へ届出が必要で(第8条)、ゆう出路の増掘や動力装置にも許可が要ります(第11条)。温泉をゆう出させる目的のない掘削は第3条の許可こそ不要ですが、温泉へ著しい影響が及ぶ場合は第14条の措置命令の対象となり得ます。
宅建業者として押さえるべきは、第35条第1項に基づく重要事項説明の枠組みと、第47条第1項の不告知・不実告知の禁止です。温泉法が施行令の列挙法令に当たるかを断定するより、掘削許可の有無や条件など取引判断に重要な事実を見落とさず、必要に応じて説明・調査を行う姿勢が安全です。説明の際は宅地建物取引士証の提示(第35条第4項)も忘れないようにしましょう。詳細な要件や罰則は、必ず一次資料となる当該法令・自治体の運用を確認してください。