市街化調整区域とは?建築許可の基準と手続きを徹底解説|重説シリーズ③
市街化調整区域での建築規制を完全解説!原則建築不可の理由から、例外的に建築可能なケース、都市計画法第34条の許可基準、開発許可の手続きまで図解でわかりやすく説明。土地購入前に必ず確認すべきポイントを網羅。
📑 目次
都市計画法とは?用途地域や開発許可をわかりやすく解説
不動産を購入する際、「この土地に家は建てられるの?」「希望する建物が建築できるの?」といった疑問を持つことは多いでしょう。
これらの疑問に答えるカギとなるのが「都市計画法」です。
都市計画法は、街づくりを計画的に進めるための法律で、土地の利用方法や建築の制限を定めています。この記事では、不動産取引において重要な都市計画法の基礎知識を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
都市計画法とは?その目的と役割
都市計画法は、昭和43年(1968年)に制定された法律で、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを目的としています。
具体的には、以下のような役割を担っています。
📌 都市計画法の主な役割
- 無秩序な市街化の防止:計画的な街づくりにより、乱開発を防ぐ
- 良好な都市環境の形成:住みやすい街を作るための基準を設ける
- 土地の合理的な利用:それぞれの土地に適した用途を定める
- 公共施設の整備:道路、公園、下水道などのインフラ整備を促進
都市計画区域とは?3つの区域区分を理解しよう
都市計画法では、まず「都市計画区域」を指定し、その中を「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」の3つに区分します。この区分によって、建築の可否や規制の程度が大きく変わります。
1. 市街化区域:すでに市街地を形成している区域
市街化区域は、すでに市街地を形成している区域、またはおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。
市街化区域の特徴
- 住宅、商業施設、工場などの建築が積極的に認められる
- 道路、下水道、公園などのインフラが整備されている(または整備予定)
- 一定規模以上の開発行為には開発許可が必要
- 用途地域が定められ、建築できる建物の種類が制限される
2. 市街化調整区域:市街化を抑制する区域
市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされ、原則として建物の建築が制限されています。
⚠️ 重要な注意点
市街化調整区域では、原則として住宅や店舗などの建築はできません。ただし、農林漁業に関する建物や、一定の要件を満たす場合には例外的に許可されることがあります。土地を購入する前に、必ず自治体の窓口で建築の可否を確認しましょう。
3. 非線引き区域(区域区分が定められていない都市計画区域)
非線引き区域は、市街化区域と市街化調整区域のどちらにも区分されていない都市計画区域です。市街化区域ほどの積極的な市街化は図られませんが、市街化調整区域ほど厳しい制限もありません。
市街化区域と市街化調整区域の違い
| 比較項目 | 市街化区域 | 市街化調整区域 |
|---|---|---|
| 目的 | 市街化の推進 | 市街化の抑制 |
| 建築の可否 | 用途地域内で原則自由 | 原則不可(例外あり) |
| インフラ整備 | 充実している | 限定的 |
| 地価 | 比較的高い | 比較的安い |
| 開発許可 | 一定規模以上で必要 | 原則すべて必要 |
用途地域とは?13種類の特徴を理解しよう
市街化区域内では、さらに「用途地域」が定められています。用途地域とは、土地の使い道を定めた地域区分で、全部で13種類あります。
用途地域によって、建築できる建物の種類、建ぺい率、容積率、高さ制限などが異なります。
住居系(8種類)
| 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域。小規模な店舗や事務所は建築可能だが、大規模な商業施設や工場は不可 |
| 第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域。小中学校、150㎡までの店舗等が建築可能 |
| 第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域。病院、大学、500㎡までの店舗等が建築可能 |
| 第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域。1,500㎡までの店舗や事務所等が建築可能 |
| 第一種住居地域 | 住居の環境を保護するための地域。3,000㎡までの店舗、事務所、ホテル等が建築可能 |
| 第二種住居地域 | 主に住居の環境を保護するための地域。店舗、事務所、ホテル、カラオケボックス等が建築可能 |
| 田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を保護するための地域。農地と住宅が共存 |
| 準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などと住居が調和した環境を保護するための地域 |
商業系(2種類)
| 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|
| 近隣商業地域 | 近隣の住民に日用品を供給する商業施設のための地域。店舗、事務所、小規模工場等が建築可能 |
| 商業地域 | 主に商業等の業務の利便を増進するための地域。大規模な商業施設、事務所等が建築可能 |
工業系(3種類)
| 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|
| 準工業地域 | 主に軽工業の工場や、危険性・環境悪化が大きくない工場のための地域。住宅も建築可能 |
| 工業地域 | 主に工業の業務の利便を増進するための地域。どんな工場でも建築可能だが、住宅、店舗、学校、病院等も建築可能 |
| 工業専用地域 | 工業の業務の利便を増進するための地域。住宅、店舗、学校、病院等は建築不可 |
開発許可制度とは?
開発許可制度は、一定規模以上の開発行為を行う際に、都道府県知事(または指定都市・中核市の長)の許可を必要とする制度です。
開発行為とは?
開発行為とは、建築物の建築または特定工作物の建設のために行う土地の区画形質の変更のことです。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 土地の区画の変更:道路を新設・廃止・付け替えるなど
- 土地の形の変更:切土・盛土などにより地盤面の高さを変更すること
- 土地の質の変更:農地を宅地に変更するなど
開発許可が必要な規模
開発許可が必要となる開発行為の規模は、都市計画区域の区分によって異なります。
| 区域区分 | 開発許可が必要な規模 |
|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡以上 |
| 非線引き区域・準都市計画区域 | 3,000㎡以上 |
| 市街化調整区域 | 原則としてすべての開発行為 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡以上 |
⚠️ 注意点
市街化調整区域では、規模にかかわらず原則としてすべての開発行為に許可が必要です。また、許可の基準も厳しく、一般の住宅開発はほとんど認められません。
開発許可の基準
開発許可を受けるためには、以下のような技術基準を満たす必要があります。
主な技術基準
- 道路:開発区域内の道路は、幅員6m以上(小規模開発は4m以上)
- 公園・緑地:開発区域の面積が0.3ha以上の場合、開発区域の面積の3%以上の公園等が必要
- 排水施設:下水道その他の排水施設が、開発区域の規模や地形に応じて適切に配置されていること
- 給水施設:給水施設が開発区域について想定される需要に支障をきたさないように適切に配置されていること
- 地盤の安全性:開発区域内の土地が、軟弱な地盤、がけ崩れや出水のおそれが多い土地などではないこと
開発許可後の制限
開発許可を受けた土地では、工事完了の公告があるまで、原則として建築物の建築や特定工作物の建設はできません。
また、工事完了公告の日から起算して1年以内は、開発許可で定められた用途以外の建築物は建築できません(予定建築物等以外の建築等の制限)。
重要事項説明での都市計画法の説明
不動産を購入する際、宅地建物取引士は、買主に対して重要事項説明を行う義務があります。都市計画法に関しては、以下の項目について説明が行われます。
重要事項説明で説明される都市計画法関連事項
- 都市計画区域の内外:対象物件が都市計画区域内にあるか、区域外にあるか
- 区域区分:市街化区域、市街化調整区域、非線引き区域のいずれに該当するか
- 用途地域:13種類の用途地域のいずれに該当するか
- 建ぺい率・容積率:その土地に建築できる建物の規模の上限
- 高さ制限:絶対高さ制限、北側斜線制限、道路斜線制限など
- 防火地域・準防火地域:防火・準防火地域の指定の有無
- その他の地域地区:風致地区、景観地区、高度地区などの指定の有無
- 都市施設(都市計画道路等):都市計画道路などの都市施設の計画の有無
重要事項説明書のチェックポイント
重要事項説明を受ける際には、以下の点をしっかり確認しましょう。
- 区域区分:市街化調整区域でないか
- 用途地域:建築できる建物の用途を確認
- 建ぺい率・容積率:建物の規模の上限を確認
- 高さ制限:建物の高さの上限を確認
- 開発許可の履歴:過去に開発許可を受けているか
- 接道義務:建築基準法上の道路に接しているか
よくある質問(FAQ)
Q1: 市街化調整区域の土地を購入したいのですが、注意点は?
A: 市街化調整区域では原則として建物の建築が制限されています。農家住宅など例外的に建築可能な場合もありますが、一般の住宅は建築できないことがほとんどです。購入前に必ず自治体の開発指導課等で建築の可否を確認してください。
Q2: 開発許可を取得するまでの期間はどのくらい?
A: 開発許可の申請から許可までの期間は、通常1〜3ヶ月程度です。ただし、開発の規模や内容、自治体によって異なります。事前協議の段階を含めると、半年以上かかることもあります。
Q3: 用途地域が指定されていない土地でも建築できますか?
A: はい、可能です。ただし、都市計画区域内であれば一定の建築制限があります。また、自治体の条例により独自の制限が設けられている場合もあるため、確認が必要です。
Q4: 開発許可を受けた土地の建築制限はいつ解除されますか?
A: 開発工事が完了し、検査を経て「工事完了公告」が行われた時点で、予定建築物等以外の建築制限が適用されます。ただし、用途地域内であれば、その用途地域の制限内で自由に建築できるようになります。
Q5: 農地を宅地に転用したい場合、都市計画法以外に必要な手続きは?
A: 農地法による農地転用許可(または届出)が必要です。市街化区域内の農地であれば農業委員会への届出、市街化調整区域や都市計画区域外の農地であれば都道府県知事等の許可が必要になります。
まとめ:都市計画法を理解して安全な不動産取引を
都市計画法は、不動産取引において非常に重要な法律です。この記事で解説した主なポイントをまとめます。
📌 重要ポイントまとめ
- 都市計画区域と区域区分を確認し、建築制限の程度を把握する
- 開発許可の要否を事前に確認し、必要な手続きを理解する
- 用途地域により建築できる建物が制限されることを認識する
- 市街化調整区域では原則建築できないことを理解する
- 重要事項説明で不明点があれば必ず確認する
不動産の購入は人生における大きな決断です。都市計画法による制限を正しく理解し、将来のトラブルを避けるためにも、購入前には必ず専門家に相談することをお勧めします。
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